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患者さんインタビュー

 J-BREATHでは慢性呼吸器疾患患者さんの在宅での療養生活をご紹介しています。疾患も環境もそして家族構成も違う中で、在宅酸素療法などを行いながら、どのように病気と向き合って日常生活を送られているか、様々な工夫を凝らして、明るく前向きに暮らしている患者さん達のインタビュー記事をご紹介します。是非、一人でも多くの方に読んでいただき、思いを共有していただけますと幸いです。

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 J-BREATHでは慢性呼吸器疾患患者さんの在宅での療養生活をご紹介しています。疾患も環境もそして家族構成も違う中で、在宅酸素療法などを行いながら、どのように病気と向き合って日常生活を送られているか、様々な工夫を凝らして、明るく前向きに暮らしている患者さん達のインタビュー記事をご紹介します。是非、一人でも多くの方に読んでいただき、思いを共有していただけますと幸いです。


J-BREATH第85号 2016年8月号掲載

りんごの生長が療養のはげみ

 

りんご栽培農家
武井利憲さん(81歳 長野・飯綱町)

花摘み作業。作業台の手すりにぶら下げてある(左)のが液体酸素の子器

 

りんご農家で毎日農作業に精を出しているHOT患者さんがいる――そんな話を耳にして、さっそく会いに行きました。長野県は青森に次ぐりんごの産地。5月初め、りんごの花が真っ盛りのころでした。
 

 長野駅から北しなの線で20分余り。飯綱町は県北部、野尻湖のすぐ南に位置する静かな山里で、50km先はもう日本海です。お会いしたのは、ここで祖父の代からりんご栽培農家を営む武井利憲さん(81歳・取材時2016年)。
 武井さんが肺の異常に気づいたのは70代初めごろ。朝起きると咳をしたり、痰が出たりします。「病院で診ていただいたら?」と夫人に勧められても最初はなかなか承知しませんでした。タバコも若いころから吸っていました。重い腰を上げて受診したところ、COPDと診断されました。主治医はフライングディスクの普及活動で本紙でもおなじみ、東長野病院の大平峰子先生です。
 りんご園は自宅裏山の丘陵に3ヵ所あって、一番近いところでも徒歩で坂道を上がること約10分。いまは50㏄のバイクで往復していますが、以前は歩いていました。気がつくとりんご園に着くまでに坂の途中で3回くらい休んでいました。
 

自宅とりんご園との往復はバイクで


 「おかしいなぁ、と思った。坂を上がれないんだもの」
 6年前のことです。「これじゃ仕事になんねえ」。それまで勧められていた在宅酸素療法+包括的呼吸リハビリテーションプログラム導入の開始を決心しました。
 「でも大平先生、吸うけれど、でかいボンベ持てと言われても俺はだめだよ仕事があるから、って言ったんだ。そしたら先生は『携帯ラジオより少し大きいくらいよ』っていうんで、じゃあしょうがねえかと」(笑)
 使っているのは液体酸素。現在24時間投与で、労作時毎分3リットル、安静時2.5リットルの処方です。普段は満充填で1.6㎏の子器を持ち歩き、就寝時にはカニューラを親器につないで使います。

 
液体酸素の親器 携帯用の子器。1日2回の充填で足りるそうです
 

りんご栽培は手仕事

 一緒にりんご園へ行って作業を見学させてもらいました。
 お邪魔した5月は「花摘み」のシーズン。枝先に5~6輪咲いた花を惜しげもなく摘んで真ん中の一つだけ残します。するとそれが大きなりんごに育つのです。
 すべて手作業です。木の高さは約3メートル。上の方は高所作業車に乗って作業しますが、ほぼ両手は上げっぱなし。「収穫と並ぶ大変な仕事です。花摘みを全部終えるには梅雨明けごろまでかかり、そのころはもう小さいりんごに育っています」(恵子夫人)。
 

高所作業車を操る武井さん。木の高い位置での仕事はこれに乗って

 
 ちなみに、袋かけはしていません。〝ふじ〟という品種は「太陽さんが当たったほうが甘くおいしくなります」。そうして育てたのが〝サンふじ〟で〝サンつがる〟も同様。風雨にさらされて育つぶん表皮は多少荒れるものの豊潤でビタミンもたっぷり。農家の高齢化や嗜好の変化などを背景に、「無袋りんご」が増えているそうです。
 育ったりんごは重いので収穫の季節も重労働です。ここで育てているのは〝サンつがる〟〝しなのスイート〟〝サンふじ〟。収穫時期が少しずつ違い、〝サンふじ〟の収穫は12月だそうです。
 満開の木々を見渡しながら「きれいなもんでしょう」と武井さん。「これみんなりんごになるんだ。うまいぞお。秋になったら味をみてくんねかい」
 ここにいるときが一番ほっとすると言います。
 

りんごの花。つぼみは淡いピンク 残すのは真ん中の花だけ   8月21日現在。こんなにりっぱなりんごに育ちました。(撮影=大川幸子さん)

 

毎日2回も!入浴

 雨の日以外、武井さんは毎日仕事に出かけます。朝食をとってりんご園へ行き、昼食に帰って、午後もまた出ていく。
 「病院に行くと6分間歩行なんてさせられるけど、毎日歩いてるからいいって言ってるんだよ」(笑)
 毎日の疲れを癒すのはお風呂。「好きでね。毎日2回入らないとだめだ。夕めしの前に1回、食べてからまた1回」。「苦しくはならないね」といいます。
 食事は何でも食べ、夕食時には晩酌も。「日本酒をちょっとね、なめるくらい」。夜8時には就寝し、翌朝7時に起きます。
 ただ、具合の悪いことがないわけではありません。
 「朝が一番いけねえな。起きたときちょっと苦しい。首や肩、背中がこる。起きたらカニューラが外れていることもある。それに鼻が冷たくてねぇ(液酸の特徴)。霜や露がついて濡れていたり。でも看護師さんがきてくれるからいろいろ助かるよ」
 飯綱訪問看護ステーションの看護師、大川幸子さんが週1度訪問し、体調をチェックします。「体重49.5kgでちょっと痩せ気味。これ以上減らさないよう注意しています。先生の処方で、栄養補助剤「ラコール」(大塚製薬)を毎日1パック(200キロカロリー)飲んでもらっています」(大川さん)。
 1日2回の体操も日課です。ビデオの故障で「ながいき呼吸体操」が見られず、いまはNHKの体操を見ながら…。冬は特に体を動かすよう注意しているそうです。
 

(右から)武井利憲さん、恵子(えみこ)夫人、大川幸子さん(看護師)。後ろは遠山

 
 

主治医の大平先生からメールでコメントをいただきました。

 「初めはなかなか受け入れてもらえず酸素導入まで2年くらいかかりましたが、導入後は仕事に有用と分かっていただけ、いまは導入を勧める他の患者さんに『先輩としてアドヴァイスを』とお願いすると『よしきた!』。息苦しそうな方がいると、頼まなくても『おめさんも酸素を使ってみろや。これはいいぞお』と話してくださいます。医療者が言うよりも信じていただけるので、武井さんには本当に感謝しています。武井さんを拝見していると〝身体活動性維持は大切〟〝好きな仕事を持っていることは大切〟としみじみ感じます」。