呼吸器障害者の医療・福祉
慢性的な呼吸器疾患患者さんは、息切れがあるため何をするのも億劫(おっくう)になりがちです。単調な毎日にメリハリをつけるために、積極的に外にでかけたり、時には旅行など試みるのも一案と言えます。そのためには医療や福祉のサポートが欠かせません。
国や地方自治体には、難病の患者や家族を支える様々な制度があります。しかし、制度によっては地域ごとに申請条件が異なるなどの格差問題もあります。当センターでも会報紙「J-BREATH」で紹介したり、個別のお問合せにも応じておりますが、病院の担当窓口やお住まいの自治体に問い合わせるなど情報収集が必要になります。主な制度は下記をご参照ください。
医療保険制度・医療費助成制度
身体障害者手帳を取得できれば、国や自治体のサービスや制度をより多く利用できるようになって便利ですが、それを取得するには患者が自ら申請しなければなりません。内部障害(心臓、呼吸器、腎臓など)の障害等級は現在、1級、3級、4級とされており、呼吸器疾患の評価基準については問題点が指摘されています。当センターで最も多く問い合わせを受けております。Q&A式でご紹介していますので、こちらをご参照ください。
毎月申請して還付される高額療養費制度
高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う1か月間(暦月:1日から末日まで)の医療費が上限額を超えた場合に超過額が後で還付される制度です。外来診療も対象になります。上限額は年齢や所得などの条件によって異なりますが、医療費の軽減負担のための制度なので、病院の医療相談室や会計窓口に相談してみましょう。医療費は毎月1日から末日までで月ごとに計算されます。毎月、自ら申請しなければなりません。
事前申請が必要な限度額適用認定証
毎月の医療費が上限額を超えることが分かっている場合は、事前に限度額適用認定証を取得しておくと便利です。医療費の支払いの際に窓口に提示すれば、支払額を自己負担上限額に抑えられ、一時的に多額の負担をしなくてすみます。ただ、限度額適用認定証の取得も申請が必要です。ご自身が加入している各保険組合(協会けんぽ組合、共済組合など)の担当窓口に持参あるいは郵送するか、国民健康保険や後期高齢者の場合は、住民登録をしている市町村の担当窓口に申請します。
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
全国健康保険協会 高額な医療費を支払ったとき
これは都道府県や市町村などの地方自治体が実施している制度で、医療費の一部負担金を行政側が負担して、患者さんとそのご家族の経済的な負担を軽減するものです。対象者には、受給者証が交付されるので、医療機関で医療費の支払いの際に保険証と一緒に提出することで、健康保険の全額または一部自己負担分が助成されます。
【注意点】
自治体によって名称が異なり、受給者証の交付対象となる人も各地方自治体で異なるため、申請したい場合は、お住いの市町村の障害福祉課などに問い合わせましょう。年齢、身体障害者手帳の等級(呼吸器疾患は内部障害)、加入している健康保険の種類を伝えて確認が必要です。原則として身体障碍者手帳を取得していることが条件ですが、地域によって助成の基準(所得、年齢、障害者手帳の等級など)が異なるため、身体障碍者手帳を持っていても対象にならない場合もあります。
難病医療費助成制度、難病のうち「指定難病」に該当する疾患にかかる医療費が助成される全国統一の医療助成制度です。治療が確立されてないため、薬や治療代が高額になることが多い「指定難病」に該当する疾患の方を援助する制度です。現在、「指定難病」とされている疾患は300以上あります。「特定医療費(指定難病)受給者証」(法別番号:54)を指定医療機関・薬局で提示すると負担額が2割になります。さらに所得に応じて月の上限額が設定され、それを超過した自己負担(窓口支払い)がなくなります(平成27年から各医療機関・薬局の合算になりました)。
「指定難病」には告知番号が付いています。難病情報センターのサイトで調べるときは番号で調べると便利です。病気の説明や診断基準、申請書類を見ることができます。
呼吸器疾患及び在宅酸素療法に関係のある「指定難病」
84 サルコイドーシス
85 特発性間質性肺炎
86 肺動脈性肺高血圧症
87 肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症
88 慢性血栓塞栓性肺高血圧症
89 リンパ脈管筋腫症
228 閉塞性細気管支炎
229 肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)
230 肺胞低換気症候群
231 α1―アンチトリプシン欠乏症
277 リンパ管腫症/ゴーハム病
278 巨大リンパ管奇形(頸部顔面病変)
294 先天性横隔膜ヘルニア
330 先天性気管狭窄症/先天性声門下狭窄症
難病情報センター
呼吸器障害者の医療関係リンク
行政(関連省庁)
医師会など
その他
患者団体
国内の医療関連学会・研究会・団体
- 日本医学会
- 一般社団法人 呼吸器学会
- 一般社団法人 呼吸ケア・リハビリテーション学会
- 一般社団法人 日本内科学会
- 一般社団法人 日本外科学会
- 一般社団法人 日本アレルギー学会
- 特定非営利活動法人 日本肺癌学会
- 一般社団法人 日本結核病学会
- 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
- 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
- 一般社団法人 GOLD委員会 COPD情報サイト
関連冊子・著書・コラムなど
※世界で最初に在宅酸素療法を始めたコロラド大学 故トーマス・ペティー教授の最後の著書「酸素愛用者の挑戦2」の日本語版を洛和会音羽病院のサイトでご覧いただけます。